スタッドレスタイヤだけじゃない! 「真冬の道路」を走るときの大切な準備 ~安全な冬のドライブのために~
冬のドライブ、特に雪が降る地域や凍結の恐れがある場所への移動は、事前の周到な準備が不可欠です。
「スタッドレスタイヤを装着したから安心」と油断するのは禁物であり、もしもの事態に備えた人とクルマ両方の準備、そして雪道特有の運転技術と心得が、安全な冬のドライブを支える重要な要素となります。
今回は、「真冬の道路」を走行する際の具体的な準備と運転のポイントを解説します。
スタッドレスタイヤは万能ではない ~次にすべきこととは~

冬の帰省やウインタースポーツへ向かう多くのドライバーにとって、スタッドレスタイヤは雪道走行の基本装備です。
降雪・積雪が予想されるエリアを走る予定がある場合は、必ずスタッドレスタイヤ装着車で出かけるようにしましょう。
スタッドレスタイヤは、低温下でも柔らかさを保つ専用のゴムや、氷上の水膜を除去し路面に密着させるための独特のトレッドパターン(溝)によって、凍結路や圧雪路でのグリップ力を高めています。
しかしスタッドレスタイヤを装着していても、過信は禁物です。深雪やアイスバーン(凍結路面)、さらには予期せぬ大雪による立ち往生などのリスクは常に存在します。
国土交通省や警察庁でも、冬用タイヤの装着だけでなく、それに加えてタイヤチェーンの携行、そして万が一の状況に備えた防災用品の準備の重要性を強調しています。
まずスタッドレスタイヤを準備して雪道走行の安心を得たら、次のステップとしてさらなる準備と適切な運転知識を持つことが、真の安全につながります。
「もしも」のときの備えを用意する ~車内での安全確保~
大雪や事故による通行止めなどで立ち往生した場合、長時間にわたり車内で待機を余儀なくされる可能性があります。
このような「不測の事態」に備えた携行品を備えておくと良いでしょう。
■体温とエネルギーの維持
立ち往生による停車中は、寒さから身を守る備えが生命線となります。
●防寒具と保温用品

毛布、ひざ掛け、使い捨てカイロ、厚手の手袋や帽子などを、乗車人数分より多めに用意しておきましょう。
●食料と水
飲料水はもちろん、カロリーメイトなどの非常食や、すぐに食べられる甘いもの(チョコレートなど)も積んでおくと安心です。

■車外作業と情報確保のための装備
雪道でのトラブル対応や情報収集のためには、次の装備が役立ちます。
●除雪・脱出用品
・スコップ(雪かき)
車両周辺の除雪や、スタックした際のタイヤ周りの雪を取り除くのに不可欠です。

・スノースクレーパー・解氷剤
凍り付いた窓やワイパー周りの氷を取り除くために使用します。

●情報・連絡手段の確保と用意しておきたい携行品
・携帯電話と充電器
満充電にしておくのはもちろん、長時間の待機に備えて大容量のモバイルバッテリーを必ず携行しましょう。情報収集や緊急連絡に欠かせません。

・懐中電灯・発炎筒・停止指示板(三角表示板):
夜間の作業や、立ち往生時に後続車に危険を知らせるために必須のアイテムです。

●その他
タイヤチェーン、ブースターケーブル(バッテリー上がり対策)、けん引ロープなども、不測の事態に備えて常備が推奨されます。
また、雪でクルマが埋まった状態でエンジンをかけ続けると、排気管が雪で塞がれて一酸化炭素(CO)中毒の危険性が高まります。
車内にとどまる場合は、できる限りエンジンを切るか、定期的にマフラー周辺の雪を除雪し、換気を行うようにしましょう。
クルマの備えも大切:走行前・走行中の対策
安全な雪道走行は、クルマのコンディションと冬の環境に合わせた特殊なメンテナンスから始まります。
■燃料とウォッシャー液の凍結対策
●ガソリンは満タンに
大渋滞や予期せぬ長時間停車に備え、暖房を使い続けるためにも、燃料は常に余裕をもって満タンに近い状態を保つことが鉄則です。

●ディーゼル車の軽油凍結対策
ディーゼル車にお乗りの方は、さらに注意が必要です。
都市部で給油した軽油は、低温環境下(特にマイナス10℃以下など)で凍結する可能性があります。
軽油の成分(セタン価など)は地域や季節によって等級が分けられており、寒冷地では凍結温度の低い寒冷地仕様の軽油が販売されています。
雪国に入る際は、都市部での給油を避け、現地で寒冷地用軽油を給油し直すことがトラブル防止につながります。
●ウォッシャー液の補充と濃度調整
自家用車で出かける場合は、ウォッシャー液についても気を付けておくと良いでしょう。
通常のウインドウウォッシャー液は、外気温が氷点下になるとノズルやタンク内で凍結し、使用できなくなることがあります。冬場は必ず寒冷地用のウォッシャー液に入れ替えましょう。
寒冷地用は凍結防止成分(エタノールなど)の濃度が高く、原液使用でマイナス数十℃まで対応できる製品が多く販売されています。
視界確保と車内環境

●デフロスター(曇り止め)の活用
雪道を走行中、車内外の急激な寒暖差でフロントガラスが曇りやすくなります。視界不良は事故に直結するため、暖房を強めにしてデフロスター(曇り止め)を積極的にONにし、クリアな視界を確保しましょう。
●出発前の除雪
ボンネットやルーフ(屋根)に積もった雪をそのまま走行すると、ブレーキをかけた際などに前方に雪が滑り落ち、突然視界が遮られる危険性があります。また、走行中に雪が後続車に飛散し迷惑をかけることにもなります。

目的地についても油断は大敵:駐車時の注意点
長距離運転を終え、ほっと一息つく駐車時にも、寒冷地特有の注意点があります。

●駐車場所の選定(凍結防止)
翌朝の出発をスムーズにするため、駐車する際はできるだけフロントガラスに日が当たる向きを選ぶのが理想です。日陰に駐車すると、一晩で窓ガラスがガチガチに凍結し、出発前の解氷作業に時間を要することになります。
●パーキングブレーキの凍結防止
寒冷地でパーキングブレーキ(サイドブレーキ)を使用すると、ブレーキワイヤー内部に水が浸入し、それが凍結して解除できなくなることがあります。
・対処法 ~通常のパーキングブレーキ車の場合
平坦な場所では、パーキングブレーキを使用せず、輪留めを使用して車両を固定し、トランスミッションをP(パーキング)レンジ(AT車)またはローギア/リバースギア(MT車)に入れます。
・対処法 ~電動パーキングブレーキ(EPB)車の場合~
最近の車両に多い電動式パーキングブレーキは、エンジン停止時に自動で作動する車種が多くあります。
※凍結リスクを避けるために、取扱説明書を参照し、自動作動を解除する設定があるか確認し、解除操作を行った上で駐車しましょう。
まとめと安全運転の心得
真冬の道路を安全に走行するためには、スタッドレスタイヤの装着は大前提であり、それはあくまでスタートラインに過ぎません。
その上で、「もしも」の事態に備えた防災・非常用装備の携行、凍結を防ぐためのクルマのメンテナンス、そして安全な駐車方法を実践することが求められます。

安全運転の心得
警察庁は、雪道・凍結路での運転は「急」のつく操作(急発進・急ブレーキ・急ハンドル)がスリップの原因となるため、絶対に避けるよう強く注意を促しています。
●速度を落とす
速度を十分に落とし、車間距離を通常より大幅にとって、心と時間にゆとりを持って走行しましょう。
●「じわり」操作
発進時やブレーキ時は、アクセルやブレーキペダルを「じわり」と踏み込み、ゆっくりと操作することを心がけましょう。
●エンジンブレーキの活用
ブレーキに頼りすぎず、エンジンブレーキを積極的に活用して緩やかに減速することが、スリップを防ぐ鍵となります。
「冬の準備」は、命を守るための最も重要な「保険」です。適切な準備と慎重な運転で、安全で快適な冬のドライブを実現しましょう。
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